時をかける表象

東京大学文科2類。記事と日記に分かれてます。

駒場祭

2019/11/22 金曜日 [あとがき] 2020/10/15 木曜日

 

改札を抜けると、そこは駒場キャンパスだった

いつになく騒がしい正門前の声と、シャッターの音、久しぶりの早起きにため息をひとつ、見上げると空が泣き出しそうな、今日は駒場祭

部活の方の店に行くと、もう数人が集まっていた

聞くと、ポテトが届くのを待っているらしい

予報通りの冷たい雨がテントの屋根を叩く音を聞きながらポテトの到着を待ち、ようやく試食までありつけたのは開店予定時刻を30分近く過ぎた後だった

平日の午前ということもあって、目の前の通りには人がほとんどいない

試食という名目でいろんな味付けを試しながら腹を満たし、ポテトを揚げるフリをして冷えた体を温め、お客さんにやってもらうはずのクイズを出し合って来客を待っていた

「現在の男子100m日本記録保持者は?」「今年の世界陸上はどこで開催された?」という陸上部らしい問題に紛れて、「サンスクリット語で『精霊の山』という意味の、世界で8番目に高い山の名前は?」のような難問もいくつかあった

「ダビデの星が国旗に描かれている国はどこ?」という問題にイスラエルと即答して見事に100円の割引を獲得していった方は予想以上に多く、さすがだなといつも感心していた

10時を過ぎた頃から人が集まり始め、少しずつポテトも売れるようになっていった

特に自分が呼び込みを始めた11時ごろには9人くらいの男子高校生の団体が2つほど来店し、一時生産が追いつかないという状況が生まれた

もうクイズの答え教えてあげるからみんな買おうよ、という言葉で多くの学生に買ってもらい、最終的にはハロプロのテレビ撮影の方々にも来店していただいた

テレビに映るかどうかはわからないが、多くのスタッフの方が撮影はやめてください、とか、詳しく言っていいのかわからないけどテレビってこういう風に作られているんだなと思わされるような局面を垣間見ることができた

そのテレビ取材を機に客足が途絶え、午後1時以降は苦しい時間帯だった

雨も次第に強くなり、クラスの射的の方も雨で看板が大破し、目玉商品である大江戸温泉のチケットも早々と当てられてしまうなど、厳しい状況に置かれていた

各部員のクラスの売り上げを聞いても、平日ということもあって予想以上に厳しく、足元の悪い中、目の前を通り過ぎていく人々に向かって「PayPay使えます」「カード決済も可能です」「遺伝子組み換えではありません」「軽減税率対象商品です」「ワイドナショーにも取り上げられました」といった意味不明な宣伝をしてみても誰も見向きもしてくれない時間帯が続いた

食堂前で延々と演説を続ける時代錯誤社の気持ちが分かったような気がした

OBの方や先輩もこの時間にはあまり来てくれず、本当に虚無な時間を1時間近く過ごし、自分は15時にシフトを終えた

結論から言えば5時間近くシフトに入って、多分利益は1人1000円もないだろうし、それなら普通に時給2000円前後のバイトをした方が10倍ほど得ではあるのだが、待ち時間に同期と話すのも楽しかったし、共同作業を通じて親睦も深められたと思う

正門を出て井の頭線のホームに吸い込まれていく頃も雨はずっと降っていたが、自分の心は晴れていた

 

 

 

[あとがき] 2020/10/15 木曜日

東京大学の大学祭には五月祭と駒場祭があります。五月祭は赤門がある本郷キャンパスで毎年5月に行われるものです。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で9月末に史上初のオンライン開催という形を取り、一応の成功を収めたと聞いています。報道ステーションで特集されているのを偶然テレビで見かけ、少し誇らしい気持ちになりました。例年では入学当初のオリ合宿で五月祭委員を決定し、委員の指揮の下、1年生がクラスごとに店を出しています。団体によっては部活やサークルで出店している所もありますが、少なくとも陸上部は五月祭に出店していません。私のクラスはタピオカを出店し、なんだかんだで1人4000円くらいの利益が出たと記憶しています。ガラポンでワイヤレスイヤホンやモバイルバッテリー、50円キャッシュバックなどを景品にしたのが功を奏したような気がします。お釣りの50円玉が不足したり、YouTuberのはなおに影響を受けて注文時に問題を出してくる中高生がいたりして、普通に楽しかったです。

駒場祭では陸上部は基本的に全員参加でフライドポテトを出店し、クラスの方では有志で射的を出店しました。私は一応クラスの方にも参加し、前日の準備で段ボールを調達してテントを貼るくらいには携わっていましたが、当日はシフトに入ることができませんでした。これは結構五月祭・駒場祭あるあるだと思うのですが、各々がいくつかの団体で出店しているため、シフトの調整ができずに全ての団体がにらめっこしてしまいがちなのです。部活の方でも「まだクラスのシフトが出ていないのでわかりません」というセリフを何度も聞きましたし、私も「部活のシフトがまだわからないので」と言っていました。担当者は本当に大変だと思います。結果的に私は陸上部の方に朝から5時間ほどシフトに入ったと思います。雨の降る平日の午前ということもあって、本当に忙しいのは一瞬だけだったような気がします。クイズの準備として日本史の用語集を持ってきた部員がいたりして、やっぱ東大生だなと実感しました。ちなみに陸上部の方は屋台の場所に恵まれたこともあって、1日目からそれなりに儲けは出ていましたが、クラスの方は結構厳しいというのを1日目の昼に聞きました。陸上部のLINEグループにも、「クラスの方が経営不振なので本当に誰か食べに来てください」というようなSOSが散見され、どこのクラスも大変だったんだなと思いました。

 

 

 

私はこの日の夜には東京を離れていたのですが、この次の日には自称少年革命家YouTuberのゆたぼん氏も来ていたらしいです。学校には行かないのに、全く関係ない大学の学祭には来ていただけるという令和の革命家ぶりをこの目で拝見したかったなと思います。土日は天気を持ち直したこともあって、駒場祭全体も盛り上がっていたらしいです。1日目の昼に目玉景品の大江戸温泉を失うなど、雲行きの怪しかったクラス出店の射的も土曜日は金曜日の6〜7倍、日曜日は金曜日の約9倍の売り上げが出て、結果的に1人4000円くらいの利益が出たと思います。いっぱい子供がやってくれたらしいです。私は当日のシフトに入っていないのに、一応準備に来てくれたからということで分け前を貰いました。端的に言えば神対応です。利益が出ると戦利品を分け合う形でとても団結力が強くなるし、逆に利益が出ないと険悪になると噂されています。五月祭も駒場祭も一応の利益が出て良かったなと思います。陸上部の方もいくらか利益が出たのですが、みんなで駒場祭用にパーカーを作ったので返金されることはありませんでした。雨が降っていて、足場も悪く、しかも風が冷たくて寒いという最悪のコンディションでしたが、これを機に親睦を深めることができたと思います。関係者によると、今年の駒場祭はオンラインで開催されるらしいです。出店という共同作業を通じて仲良くなるという主催者側の魅力は半減してしまうかもしれませんが、逆に遠く離れていても参加できるというメリットもあると思うので、一長一短なんだろうなと思います。どんな難局であっても、臨機応変に対応できる組織であって欲しいと思いますし、私もその一員でありたいと思います。